外国の企業家の自叙伝や伝記物が書店に続々と登場し、日常生活に疲れた中産層およびサラリーマン読者を捉えている。 これらの本が読者の人気を集めているのは、まず億万長者の人生の歩みが小説より面白いという点を挙げることができる。また彼らの成功談を通じて、息詰まる日常から脱出できる契機になるという点でも多く読まれている。 しかし本格的な国内企業家の伝記物はほとんどないのが実情だ。現在書店に出ている企業家の自叙伝および伝記物は翻訳物で、とくに米国と日本の企業家が大部分であり、全部で20余種が出ている。外国企業家の伝記物に国内の出版社と読者の関心が積極的に向かう契機となったのは、まさに1984年末から起きたアイアコッカ旋風を挙げることができる。クライスラー社会長に就任し優れた経営力を発揮して連日言論の話題に浮上すると、汎友社・杏林出版・経営文化社の3社が「アイアコッカ自叙伝」をほぼ同時に出版し、激しい販売競争を繰り広げた。彼への関心は最近まで根強く続き、時事英語社から「アイアコッカ秘話」(ピーター・ワイデン著)と「アイアコッカ直言」(アイアコッカ著)が出版され、着実な人気を集めている。 アイアコッカと双璧をなす自動車会社経営の鬼才、ジョン・デロリアンの自叙伝「デロリアン」(東国出版社刊)も読者の関心を集めた本だ。 自動車技術者としてGMに就職し、最年少の支配人と重役を経て副社長にまで上がったデロリアンが、自動車業界の激しい派閥争いに巻き込まれFBIに逮捕される受難とともに、結局は没落してしまう栄辱の過程を、推理小説のように迫真感をもって描いた本である。「デロリアン」は勝者ではなく敗者の自叙伝という点でとくに興味深い本だ。 また米国最大の石油化学企業オクシデンタル社会長で、90歳の年齢で東西陣営を自由に行き来し、幕後外交家としてより大きな名声を博しているアーマンド・ハマーの自叙伝「アーマンド・ハマー」(青林出版刊)も翻訳されて出た。 「アーマンド・ハマー」とともに昨年の米ベストセラー首位を占めたドナルド・トランプの自叙伝「トランプ」(金栄社)は、典型的な「アメリカン・ドリーム」とは何かを示す本としてステディセラーになっている。 この「トランプ」が私生活よりも金を稼ぐ方法を語ることに重点を置いているとすれば、最近出版された「ホテル王ヒルトン自叙伝」(三省出版社刊)は、華やかな事業家である前に人間として備えるべき人生の技術を提示している本である。 一方、日本の企業家としては、ソニー社の創業者・盛田昭夫を中心とした「ソニーストーリー」(時事英語社刊)と「ソニーの奇跡」(麒麟苑)という2冊の本が出ている。また国民学校4年中退の学歴で23歳のとき社員3人から出発し、13万5000人の従業員を抱えるに至った松下グループの創業者・松下幸之助の伝記「マツシタ」(邦光史郎著、三省出版社・東亜書院刊)と、石川島重工業および東芝を築いた土光敏夫の経営哲学と人生論を描いた「21世紀に残す遺言」(志村嘉一郎著、汎友社刊)などがある。かと思えば、日本経済新聞に連載された「私の履歴書」のうち松下・本田など代表的な実業家10人の自伝を集めて翻訳した「挑戦から成就まで」(上・下、経営資料社刊)も出ている。 これらの本の共通点は、大財閥が特別な人ではなく、努力とビジョン、そして冒険を通じて成功した平凡な人間であることを強調しているという事実である。 〔申正燮記者〕
[写真] ◇中産層およびサラリーマン読者の「ドリームブック」となっている外国企業家の自叙伝と伝記物が着実に人気を集めている。






