1990-09-30 | 鄭鉉祐

[古典と現代経営] 鄭鉉祐(淑明女子大教育院教授)真心で大切にする上司には心服する

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◇部下を愛せよ、ただし真心で愛せよ 部下の無礼をとがめない。 春秋五覇の一人であった楚の荘王の逸話を一つ。 楚の荘王はある夜、群臣を集めて酒宴を盛大に催した。君臣が入り交じって騒ぎながら遊ぶうち、宴席は盛り上がっていった。 そのとき突然激しい風が吹き付け、四方に灯していたろうそくの火がすべて消えてしまった。宴席は漆黒の暗闇に包まれた。すると酒に酔った臣下の一人が、荘王の愛妾を抱きしめて口づけをした。 驚いた愛妾はその臣下の冠のひもを引きちぎり、手探りで進んで荘王に訴えた。 『殿下、早く灯りをつけるようお命じください。わたくしに無礼を働いた者がおりましたので、ここにその者の冠のひもを引きちぎってまいりました。早く灯りをつけ、冠のひものない者を探し出して厳罰に処してください。』 しかし荘王は思いがけない返答をした。 『無礼ではあるが、女のために士を犠牲にすることはできぬ…。』 そして暗い座中に向かって重々しく声を上げた。 『卿らは聞くように。灯りを再びつける前に、皆、冠のひもを取るように。冠のひもをそのままつけている者がいれば厳罰に処す。』 しばらくしてろうそくを再びつけると、群臣の冠のひもはすべて外されていた。そのため荘王の愛妾を戯れた臣下は災いを免れた。 それから2年後、晋が大軍を率いて楚に攻め込んできた。そのとき楚軍の先頭に立って目覚ましい活躍をする将がいた。 その臣下の活躍に刺激を受けた楚軍は全軍が勇戦奮闘し、楚は晋の軍勢を難なく撃退した。荘王はその将を呼んで問うた。 『そなたの剛勇によって強敵である晋軍を撃破した。そなたはいったいどのような理由で、あれほど命も顧みず勇戦奮闘したのか。』 するとその将は答えた。 『殿下、申し上げるのも恐れ多いことですが、今から2年前、殿下が催された宴席で灯りが消えて漆黒のように暗くなったことを覚えておいででしょうか。』 『ふむ…そのようなことがあったな…。』 その将は続けた。 『あの暗闇の中で殿下の愛妾を戯れた者がおり、その愛妾が冠のひもを引きちぎったことも覚えておいででしょうか。』 『そうだ、そのようなことがあった。』 『殿下、臣を罰してください。実は当時、臣が酔いつぶれて春心が動くあまり、殿下の愛妾を抱きしめてしまったのです。』 『ふむ….』 荘王は昔のことを思い出しながら、うなるようにつぶやいた。件の臣下が再び申し上げた。 『ところが殿下は灯りを再びつける前に群臣に命じ、皆に冠のひもを取らせました。これは士の名誉を重んじられたものです。そのおかげで臣は何事もなく無事でいられました。それ以来、臣は殿下のためにこの命をささげる覚悟を固めておりました。』 ■現代経営のポイント 上の話は戦国策に出てくる話である。トップまたはリーダーは部下を愛せよ、ただし真心で愛すべきである。陰徳には良報が伴うという言葉もあるが、そうしたことさえ望まず真心で愛するとき、部下は死力を尽くして心服する。部下から不信と批判を多く受ける経営者は自滅する。上司もまた同じである。広い度量と寛大さが重要である。