財務長官という職は他省庁よりはるかに特殊な要件を備えなければならないというのが一般的な見方である。財務部は金融機関を直接所管するのはもちろん、租税・金融という二本の刀を手に一般企業の生殺与奪の権を振るう強大なパワーを行使している。財務長官は通貨金融政策などについて卓越した識見を備えなければならないのはもちろん、統治権者が最も信頼できる人物でなければならない。自尊心がとりわけ強い財務官僚を統率するためには、統治権者の信任に劣らず専門知識も必要だ。そのため歴代財務長官は韓国銀行出身・教授出身および経済官僚出身がほとんどで、政治家出身は見当たらない。しかも選挙を控えた時点において、財務長官は選挙インフレなどへの対策はもちろん、資金の流れまで責任を負える中核人物にならざるをえない。 官僚社会の人脈をたどる際には、地縁を軸とする政治の舞台や血縁を重んじる財界とは異なり、学縁を土台に接近するのが通例である。 財務部の公務員を出身大学別にみると、断然ソウル大出身が主流を成している。 韓国国税庁・韓国関税庁など外局を除く本部の局長級以上の公務員のうち、非ソウル大出身は見つけにくい。ソウル大商大出身は李秀烋次官を頂点に、文憲相税務大学長(1級)・李晶載理財局長・李永鐸証券局長・李廷甫経済協力局長・鄭東洙広報官・金永燮監査官・金鳳憲国税審判所常任審判官など8人である。ソウル大法大も金榮彬第1次官補・李桓均企画管理室長をはじめ、金耕宇国庫局長・韓錠吉保険局長・姜萬洙国際金融局長・趙健鎬関税局長・尹增鉉税制審議官・金鍾煥国税審判所常任審判官など8人で、ソウル商大とともに最大の人脈を形成している。金容鎭税制室長はソウル文理大出身。 高大、再浮上を狙う 高麗大出身としては金元基長官(78~80年)以来11年ぶりに李龍萬長官が登場し、李榮国税審判所長・裵永浩国税審判所常任審判官などが活躍しており、慶北大の白源九第2次官補、成均館大の元鳳喜貯蓄審議官、陸士の趙泰武非常企画官などが非ソウル大出身である。 書記官級以下になるとソウル商大出身が最大の人脈を形成しており、ソウル法大出身は次第に減少する様相を示している。 財務部の人脈をたどる際、ソウル大出身があまりに多数であるため大学別人脈はさほど意味を持たないが、安岩の地の高麗大出身者は往年の金元基長官時代を忘れられずにいる。78年12月に財務長官として入閣した金長官は「人の能力に大きな差があるものか。自分が信じられる人を選ぶ」として高大出身を重用した。当時の李龍萬財政次官補・朴判濟国庫局長・李容根行政管理担当官・權容鎭証券2課長・金峰徹保険課長・林營浩租税政策課長・趙寬衡監査室書記官などが威容を誇った安岩出身者である。彼らは今、李長官の就任によってかつての栄華の再現を夢見ているのかもしれない。 李龍萬長官は35代目の財務長官。35代のうち金顯哲(6代と8代)・黃鍾律氏(16代と23代)が二度の財務長官を務めたため、歴代財務長官は計33人。彼らを出身地域別にみると忠南が8人で最も多く、慶北6人、以北出身5人、ソウル4人、京畿と慶南が各3人、続いて江原2人、釜山・忠北地域が各1人の財務長官を輩出した。湖南出身の財務部長官が1人もいなかったという点に留意する必要がある。 地域出身との関連で、高校を中心とする学脈は京畿高と慶北高に大きく分かれる。 京畿高はかつて最高の名門高校であったことを裏づけるように、財務部内で最多の人脈を形成している。 金榮彬次官補をはじめ、金耕宇国庫局長・李廷甫経済協力局長が京畿高出身であり、理財局の鄭健溶財政融資課長・李鍾九銀行課長・徐承一中小金融課長、国庫局の李鍾敏国庫課長、証券局の李佑喆証券業務課長、国際金融局の延元泳外国為替政策課長・方榮玟国際機構課長・陳永郁国際金融課長、経済協力局の李鍾南投資振興課長・朴鍾元外資管理課長、関税局の沈達燮産業関税課長などがエリート公務員の面目を誇示している。彼ら以外にも權承雨EBRD理事・朴峰秀駐サウジ財務官、首相室に派遣中の南宮薰局長、嚴洛鎔駐ジュネーブ財務官、世界銀行(IBRD)勤務中の林昌烈局長、アジア開発銀行(ADB)の沈亨燮局長なども、遠からず中核の職責を担うことになる京畿高出身の才士である。 「次官級課長」の異名 京畿高出身のうち最古参の金榮彬次官補は済州道出身で、善隣中学夜間部から京畿高に進学した人物。保険・証券・理財局長など要職を経た金次官補は、昨年次官補に昇進した際、朴哲彥体育青少年部長官とソウル法大の同期同窓であるという点で注目を集めもした。 京畿高出身者は、70年代半ばの金龍煥長官時代における申明浩・李憲宰・林昌烈氏の活躍をしばしば話題にする。京畿高58回の同期同窓であるこの3人は当時課長として金長官の親衛隊として寵愛を受け、次官補より強大なパワーを誇示し「次官級課長」と称された。一時は弟(申善浩栗山グループ会長)の件で人事上の不利益を受けたこともある申氏は、現在民自党専門委員として捲土重来を狙っており、韓国信用評価社長である李憲宰氏も官界へのカムバックに向け努力している。林昌烈氏はIBRDに一時「退避」しているが、近いうちに財務部へ復帰する予定である。 京畿高に次いで注目される高校は慶北高。人数では京畿高より少ないが、現在の職責の質でみれば京畿高を上回っている。 「TK横暴」との雑音も 白源九第2次官補を筆頭に、文憲相税務大学長・李晶載理財局長と李永鐸証券局長・金鳳憲国税審判所常任審判官・許魯仲駐米財務官、貿易博覧会に派遣中の朴晩秀局長・朴晋圭証券政策課長などが慶北高を出た。3月に理財局長に任命された李晶載局長は、李景載韓国銀行資金部長・李明載ソウル地検特殊1部長検事らと兄弟で、3兄弟全員が高等試験に合格した秀才一家の出身。李氏は卓越した能力と金融政策課長などのキャリアから理財局長の適任者であり財務長官の器との評価を受けているが、初の副理事官(3級)理財局長であり、前任の理財局長がさしたる理由もなく1年余りで異動したという点で同僚の嫉妬を受けもした。許魯仲駐米財務官も3月に主務課長を経ないまま副理事官に昇進し、初任地としてワシントンを発令された点で、李理財局長の任命とあわせてTKの横暴ではないかとの声が財務部の官吏の間に流れもした。 財務部公務員の高校学脈をたどる際、大田高を欠かすことはできない。昨年初めまで財務長官であった李揆成氏と当時の財務次官李同浩氏(現忠北知事)が大田高出身である。長官・次官と李瑾榮当時税制局長が大田高の同窓であり、面白いのは大田高でみれば李瑾榮氏が最も先輩で、李同浩・李揆成氏の順に1年ずつ先後輩であったという事実。現在は李瑾榮国税審判所長の下で金鍾煥・裵永浩国税審判所常任審判官、崔仁燮国税審判所行政調整室長、李公載駐ベルギー財務官、李仁洙駐独財務官が大田高の系譜をつないでいる。 業務関係の人脈も 李秀烋次官は馬山高出身。盧在鳳前首相が馬山高出身の唯一の閣僚であったという点で、李次官の肩は重い状況である。尹增鉉税制審議官はソウル高出身だが中学までを馬山で出ており、馬山人脈に分類されることもある。 李桓均企画管理室長は姜萬株国際金融局長とともに慶南高出身であり、金容鎭税制室長は慶北の金泉高を出た。 このほか尹增鉉税制審議官・鄭東株広報官・韓澤洙本部局長、国防大学院に入校中の吳武英局長などはソウル高出身であり、趙健鎬関税局長は普成高、韓錠吉保険局長は龍山高を出た。 財務部公務員を学脈で分類する作業は、さほど大きな意味を持たないかもしれない。また学脈よりも業務関係の中で自然に形成された人脈がより大きな影響力を発揮するのも事実である。しかし一時であれ特定の高校または大学出身者が勢力を振るうという話が飛び交い、特定地域出身者は財務部に足場がないという話が広まるなど、財務部が人脈によって動くことは決して望ましくないと指摘されている。
[写真]◇一堂に集まった歴代財務部長官 87年12月、司空壹長官の招請で歴代財務部長官が晩餐の会合を持った。右から鄭寅用・千炳圭・南悳祐・白善鎭・徐奉均・金正濂・白斗鎭・朴熙賢・宋仁相・洪升熹・李承潤・司空壹氏。 [表]◇歴代財務部長官 [表]<特別取材班>黃源甲(特集部次長待遇・班長) 金仁模(政治部記者) 李世正(〃) 朴性泰(社会部〃) 文周鏞(〃) 李賢雨(産業部〃) 李鍾宰(〃) 李海龍(証券部〃)






