1994-10-31 | 李勇雄

海外新刊 先取りする日本の経済発展、民間が主導した

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戦後日本経済の奇跡的な成長を緻密に分析した米国の本が、最近日本で翻訳され大きな反響を呼んでいる。日本経済の成長には官僚の強力な支援体制が決定的だったというのがこれまでの定説だとすれば、ケント・E・カルダー教授(米プリンストン大政治学)は最新作「戦略的資本主義」(Strategic Capitalism)で、民間部門こそが日本の産業発展を主導した戦略的役割を遂行したと強調しており、大きな対照をみせている。 著者によれば、日本には市場経済に依存しながらより長期的な展望と公的理念に忠実な組織と制度が存在してきたが、総合商社、銀行、特に興銀に代表される長期信用銀行がそれだという。これら民間主体は前途が明るく見える成長産業に集中的な融資を注ぎ込み、技術蓄積と国際競争力の増進に大きく寄与した。したがって国家が行ったことはきわめて限定されざるをえない。日本経済の代名詞として君臨している自動車、家電、コンピューター産業などが、時には過熱を懸念した政府の妨害工作(?)にもかかわらず拡大を重ねてきたのは、まさにこうした民間部門の支援に助けられたためである。通産省は勝者と敗者を分けることにも怠慢だったが、もし政府主導で経済開発が行われていたなら、衰退産業に対する固定的な融資が止まらなかっただろう。政府にすべてを任せていたなら資源の浪費を防げなかったという指摘である。したがって民間部門、特に興銀のような組織が戦略的に投資活動を続けたことで、日本経済は今日のような奇跡を成し遂げたという結論が出ざるをえない。 本書はこうした論理を証明するため、戦後日本の産業金融史を緻密に分析しているが、主な背景は1950~60年代の興銀全盛時代である。これについて日本の経済評論家らは『まるで一編の大河ドラマを読むように興味津々で説得力に満ちている』と高い点数をつけている。 たとえば中北徹・東洋大教授は本書の書評で『日本経済に対する米国の理解が実証主義精神に徹していることは早くから関心の対象となってきたが、カルダー氏の本書をみると、その境地が並大抵でないことを知り、身の毛もよだつほどである』と感嘆している。 ▲著者:ケント・E・カルダー▲訳者:谷口智彦▲出版社:日本経済新 聞社