1995-08-31 | 崔永定

崔永定(チェ・ヨンジョン)のゴルフコラム 待つことと興奮

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オーストラリアがグレッグ・ノーマンに次いで誇るプロの中に、ウェイン・グラディ(38)という選手がいる。1990年の「USPGA選手権」優勝でスターとなった彼には、しかし、苦い一つの記録が付いて回る。 1978年にプロデビューした後、海外で臨んだ17度の試合ですべて2位となった記録である。彼は18度目の試合となった1984年のドイツオープンでついに初優勝を飾り、『あまりにも退屈な練習の末に得た甲斐』と感想を述べた。 「優勝者はあらかじめ決まっている」という言葉があるように、優勝者には多くの後日談や誇張された美談などが残る。しかし屈辱の「2位」には一時の同情や憐憫があるだけで、忘却の沼に沈んで消えていくのが勝負の世界の非情さである。 ところが、彼の「2位17回」に特別な興味を抱き、粘り強く追跡した末に秘密を解き明かした米国のゴルフライターがいた。 彼の分析によれば、グラディは2位17回のうち9回も首位で最終日を迎えたが、最終日に崩れた。『これは彼の気質が弱かったからでも集中力が足りなかったからでもない。まさに競技進行の渋滞現象が生んだ悲劇だった』とゴルフライターは明らかにした。 グラディの試合の様子を撮ったビデオテープを観察すると、最終日になるとすべての選手のプレーが一様に遅かった。前の組の進行が遅れて渋滞すればするほど、その影響は次第に大きくなり、最後の優勝組に最も大きな影響を与えた。特にその最終組に入って首位の座を守ろうとするグラディには致命的だった。 グラディはティーで焦りを抑えられずペースを失い、しばしばボギーを犯したが、その確率は32%にまで達した。それは進行が順調な予選ラウンドでボギーなしの好調の波に乗ったときとは全く相反する現象だった。 こうして前の組の渋滞で焦った彼はペースを失い、自ら崩れて「2位連続17回」という珍記録まで残すことになったというのである。 我々のような者なら『少し遅いくらい何だ』と余裕を見せもするが、国際競技で1打を争うプロはそうはいかないようだ。 待ちと渋滞が、どのようにペースを崩すというのだろうか。 ゴルフ心理学者の共通した見解をみると、▲好調のときはナイスショットの記憶が次のショットまで残ってつながる。▲しかし感情的に興奮するとその記憶が消え、記憶を失って自分でも気づかぬうちに誤ったショットを平然としてしまうということである。 自分が自分を崩すことに、ゴルフをする人間の悲哀があるのではないだろうか。