酒と肴がイ・ヘンブの卓に置かれたのはその時だった。下男の若者は手早く酒と食べ物を並べてから、下の階へ降りていった。 「…ここの主人の臨家は、もともと神仙術に関心の多かった人物でな。それゆえ鴻都館という屋号をつけたのだ」 老人は空の酒瓶を逆さに持ったまま、舌をちろちろと動かした。やっと一滴の酒が落ちるのを惜しむかのように舌を鳴らした。見かねたイ・ヘンブが老人を隣の席に招いた。 「これほど有難いことがあろうか。このように良い席で五十銭を超える酒を飲ませてくれるとは」 老人は相手が止めるのを恐れるかのように続けて数杯を注ぎ、ぐいぐいと飲み干してしまった。その姿を見てサンアがくすりと笑ったが、まったく気にする様子のない顔つきだった。 「酒とはもともと狂飲水(狂飮水)よ。これを飲めば本来の我が精神はどこへやら、ではないか。もっとも、こんな世で狂っていない人物がいるとすれば、そやつこそ狂った奴よ。そうではないか?」 「…」 老人は首をかしげてから、分かったというように手のひらを軽く打ち合わせた。 「見たところ、士人はこの家は初めてでござろう」 「そうです」 「それならこの家の由来を私が聞かせてしんぜよう。この客館の主人は臨供翰という、神仙術を修めたという方士よ。臨家が客館の名を鴻都館と定めたのは、もちろん漢の時代の伝説を知っていたからであろうが、それより大きな理由は鶏鳴枕(籠鳴枕)の持ち主を探そうという腹づもりからよ」 老人は急いで話の水口を別の方へ向けた。 「それよりも屋号(屋號)に『雁の鴻』の字を用いた由来から聞かせてしんぜよう。仙道書によれば、年十四の美人を鴻象未判というのだ。『易経(易經)』に曰く、雁は『随陽鳥 雁之大者(隨 陽鳥 雁之大者)』とある。雁はもともと陽に従う鳥だ、という意味よ。ところがだ、『鴻象』と言ったときには意味がいささか変わってくる。『象』はひたひたと流れるという意味だから、鴻象未判と言えば『赤い水がひたひたと流れるにはまだ遠い』という意味になるのだ。いわば初潮(初潮、初めての月経)を目前にした年頃とでも言おうか。まさにそういう娘たちが、川辺の小石のようにこの客館には多いという意味よ」 サンアの顔が夕焼けのように赤くなった。老人は努めて知らぬふりをしながら、思いがけない話を持ち出した。 [グラフィック]
1996-09-30 | 姜永洙
小説 素女経 <483>
本文はAIによる機械翻訳です。見出しは原文(韓国語)のまま表示しています。正確な内容は原文をご確認ください。






