後手ではあるが、黒55、57と取っておくのがプロの感覚だ。別に打つなら参考図1の黒1と打つ程度だが、それなら白は問答無用で白2とつなぐところだ。黒は3に打って生きなければならないが、白4、6が先手。黒7と打てば生きること自体に支障はないが、このように縮こまらなければならない黒の身の上は情けない。碁の教えにもあるではないか。「巾着を張れば負ける」。縮こまって小さく生きることを巾着を張るという。
白58と思い切って迫った手は、アマチュアが覚えておくに値する手法。バックグラウンドが堅固なときは、このように思い切って迫るのが要領だ。
ここで少し間を置いた古力。黒59と頭を出した。部分的には行き方の型ではあるが、今はその着想に問題があった。白60、62の直撃弾を浴びることになったのである。
「はっと目が覚めた。二段にすぎない相手がこれほどパンチが強いとは。驚くべきことだった」
古力の対局後の告白。彼は朴廷桓について何も知らなかった。1984年生まれで、古力より1歳年下の朴廷桓。
黒59では、参考図2の黒1にかぶせるのがこの場合の行き方だった。白は2から8まで追及するだろうが、黒も9で左辺を掌握すれば十分であり、これならば勝負はこれからだったであろう。






