尹俊相の白20が強手だった。李世石はこの手を全く予測していなかった。彼が大きいと見ていたのは参考図1の白1であり、その時に黒2で襲撃する手があって白の苦戦になるとばかり考えていた。黒8で抜け出すシチョウ当たりに右上隅の黒石が待っている場面であるから、この戦闘はどう変化しても黒が有望だ。
「李世石がシチョウ当たりを錯覚していたのです。驚くべきことですね」(金昇俊九段)
「何の話だ。シチョウ当たりは黒が有利ではないか」(筆者)
「そのシチョウの話ではありません」(金昇俊)
実戦譜の白26まで進行した時点で、黒が白一子をシチョウで取れず黒27と打つしかないという事実が話の焦点だった。このシチョウ当たりを李世石はうかつにも考えていなかったのである。感想戦で李世石は語った。
「恥ずかしい話だが、このシチョウ当たりを錯覚した。白が20と遮る手が成立するなら、そもそも黒が大斜百変の定石を展開したこと自体が無理だった」
参考図1の白5で参考図2の白5に打つ変化はどうなるのか。その時は黒6以下黒12と追い回して白がまるごと取られる。白13の次に黒はもちろん6の place、6の地点に放り込む。
数手も戦わない状態で尹俊相は早々に勝機をつかんだ。しかし尹俊相はこの決定的なチャンスであきれた失着を打ってしまう。白30とホウズキに構えたこの手がそれだった。






