中国で年間最大の政治イベントである両会(全国人民代表大会および全国政治協商会議)が3月3日から開幕する。議会と諮問会議機構として今年の政治・経済など主要政策を最終決定する今回の両会は、特に輸出から内需中心の経済成長方式への転換、民生保障の強化などを柱とする第12次5カ年計画(2011~2015年)を最終確定するなど、画期的なイベントになるとみられる。
改革開放以降30年間の成長第一主義から脱し、富の均等分配などを通じた質的成長に重点を置いた昨年10月の共産党第17期5中全会で早くから予告されていた通り、今回の会議は「民生両会」になると予想される。特に両会を前に起きた中東発のジャスミン革命は、共産党一党独裁体制を続ける中国政府に対し、成長維持よりも生活の質を高める民生重視の歩みをさらに加速させる契機となるとみられる。中東の民主化デモの発火点が物価急騰・失業などの生活苦であった以上、所得の二極化問題が次第に浮上している中国にとっては決して他人事ではない。チュニジア政権の転覆が一人の失業中の大学生の焼身自殺から始まったように、万が一の予期せぬ事態に対し中国政府は神経を尖らせている。
温家宝首相が中国版ジャスミン第2回集会日である27日にネットユーザーとの対話に臨み、物価および不動産価格安定への意志を表明し、農民工に対する教育・医療保険の拡大、個人所得税の免税基準引き上げなど各種民生対策を打ち出したのもまさにこのためだ。温首相はこの日、第12次5カ年計画の目標成長率を7%と提示した。これは第11次5カ年計画の目標成長率7.5%より低下したもので、成長率が多少低くなっても所得再分配、社会福祉システムの拡充などを通じて民生保障に取り組むという意志の表明だ。
ウリィ投資証券北京代表処の朱煕坤リサーチセンター長は「今回の両会はこれまでにないほど民生安定に焦点が合わされている」とし、「医療・教育保険の拡大、所得分配改善対策が相次いで打ち出されるだろう」と説明した。中国は内需への経済成長方式の転換など体質転換のためにも、基層人民の所得を引き上げて消費を拡大しなければならない状況だ。そのためには農民工など社会的弱者層の社会福祉システムを構築しなければならない。例えば北京の戸籍を持つ人はがんなどの医療問題に直面した際、治療費の80%までを政府が負担してくれるが、農村から出てきた人には何の恩恵もない。農民工の子どもは通常の小学校に通うだけでも年間で多い場合1万元の授業料を払わなければならない。
これに伴い、農民工の子どもにも中学校まで無償義務教育を拡大し、2012年までに全国民の90%が基礎的な医療保険の恩恵を受けられるようにするなど、画期的な社会福祉システム拡充策が今回の両会で方向性を固めるとみられる。
一方、前回の共産党第17期5中全会で熱く議論された政治民主化改革の議論は勢いを失うと予想される。中東情勢などにより民生保障拡大の課題がさらに前面に出ているうえ、来年の権力継承を控えて安定モードへの転換が必要であるため、政治システムの積極的な変化は期待しにくい。代わりに民心離反を招きかねない高位指導層の腐敗問題については、強度の高い撲滅対策が出てくるとみられる。最近、収賄容疑で拘束された劉志軍鉄道部長の事件は人民の非難を呼んでいるが、これは中国政府が両会を前に指導層内部の引き締めに乗り出していることを示している。
■両会とは 両会とは、中国の議会に相当する全国人民代表大会と、諮問機構に相当する全国政治協商会議が毎年国家政策を決定するために集まる年間最大の政治イベント。全人代は省・自治区、軍部などから選出される代表で構成される。任期は5年。中国は共産党が主要な経済方向を決定するが、形式上は全人代で主要な法案が通過する。
政治協商会議は、共産党政権が政策決定過程で共産党代表だけでなく中国国内の民主党など少数党派の意見を集約するために設けた諮問機構。自由に政策提案を行うが議決機能は持たない。今回の両会は政治協商会議と全人代がそれぞれ3月3日と3月5日に開幕し、14日まで行われる。全人代開幕初日の5日には、温家宝首相が第12次5カ年計画を含む今年の政策要旨を演説する予定だ。






