「エアポカリプス」。空気(air)と終末(apocalypse)を合わせた新造語で、大気汚染による終末論に言及する際に主に使われる。中国・北京に居住していた外国人がPM2.5に苦しみ、相次いで帰国の列に加わった現象を外国メディアが報じた際にもエアポカリプスという言葉が使われた。2014年1月初め、北京の微小粒子状物質濃度が1立方メートル当たり993マイクログラムで、世界保健機関(WHO)の勧告基準である1立方メートル当たり25マイクログラムの約40倍に達するほど最悪だった点を考えれば、外国人の脱出ラッシュは十分に理解できる決定だった。
先月21日、ソウルの微小粒子状物質濃度が同日の世界の都市の中で2番目に高かったという驚くべき事実は、韓国でもエアポカリプスが現実化していることを痛感させる。世界主要都市の微小粒子状物質や一酸化炭素などの汚染物質濃度を測定・比較する多国籍コミュニティー「エアビジュアル」によると、先月21日午前の一時、ソウル(179)がインド・ニューデリー(187)に次いで2番目に汚染指数が高かった。韓国環境部環境科学院の調査結果を見ても、今年に入って今月21日までに全国各地に発令された微小粒子状物質特報(警報・注意報)は計85回で、2016年(41回)や2015年(51回)よりはるかに多かった。各種の呼吸器疾患はもちろん、心血管疾患・皮膚疾患・眼疾患などを引き起こしかねない「密かな殺人者」が、かつてないほど恐ろしく国民の健康を脅かしているのである。
微小粒子状物質の危険性を肌で感じる消費者は、自身と家族の健康を守るために懸命の努力をしている。すでに中東呼吸器症候群(MERS)事態を経験し、誰も自分の安全を守ってくれないという恐怖を抱くようになったことも大きい。マスク購入は基本で、空気清浄機・口腔洗浄剤・酸素缶・衣類乾燥機などを備え、積極的に微小粒子状物質に対処している。これに伴い企業が関連の差別化商品を相次いで打ち出し、関連産業も爆発的に成長する様相だ。
消費者の警戒心を示す代表的な事例がマスクに対する認識の変化だ。中世のヨーロッパで初めて登場したとされるマスクは、医師が伝染病患者を診療する際に主に着用しており、こうした背景からマスクを着けた人は長い間、病気の人や近づいてはならない人と見なされてきた。しかし最近になってマスクのイメージは急速に変わっている。否定的なイメージよりも生活必需品、あるいはファッションアイテムとまで考える人が増えた。実際、ユハンキンバリーが全国在住の20~40代女性1,700人余りを対象に調査した結果、街でマスクを着用した人を見たときどう思うかという質問に「健康を管理している人」が41%で最も高かった。「体調の悪い人」と答えた人は半分程度(23%)にすぎず、△美容整形・施術をした人(21%)△自分の姿を隠している人(8%)△特に何も思わない(5%)△大げさな人(2%)の順となった。
微小粒子状物質は人々の日常風景まで変えている。屋外でジョギングを楽しむ代わりに屋内ジムに通ったり、子どもと外で遊ぶより屋内キッズカフェ・ウォーターパークなどを選ぶ人が急速に増える傾向にある。各種の集まりで微小粒子状物質の話題は欠かせず、スイス・カナダ・ニュージーランドなど自然環境の先進国の旅行談は大きな関心を集める。ソウル瑞草区良才洞に住むパクさん(27)は「朝起きるとスマートフォンで微小粒子状物質の濃度をまず確認するのが日課の最初になった」とし「空気が悪い日は屋外活動を極力控えようと考え、家族や友人と関連情報を共有している」と語った。瑞草区内谷洞に住むユンさん(37)は「週末ごとに息子とキャンプをするのが人生の大きな楽しみの一つだったが、今年の春は可能かどうか分からない」とし「まだ幼い息子が呼吸器疾患や皮膚疾患にかからないか気をもんでいる」と話した。
微小粒子状物質への恐怖の拡散で新たな消費が増え、関連産業も急速に成長している。代表的に空気清浄機の販売が爆発的に増えている。空気清浄機は3月に販売が集中する「季節家電」の形を見せていたが、今では販売量が年間を通じて一定水準を保つ「四季家電」として定着した。2014年に50万台だった空気清浄機市場(レンタル・販売台数)は2015年に90万台、2016年に100万台へ増え、2017年には140万台に達すると見込まれる。Samsung Electronics・LG電子・Coway・大宇ウィニアなどは従来シリーズより機能を大幅に強化した新製品を相次いで発売し、一部業者は100万ウォンを超えるプレミアム製品を披露してブルーエアなど輸入ブランドと競争している。
マスクは品切れで売れないほどだ。オンラインショッピングモールのオークションによると、先月21日から1週間、微小粒子状物質や黄砂の遮断に最適化された「黄砂マスク」が前年同期比で5倍以上売れた。綿の塊状のフィルターを鼻の中に直接挿入してほこりを遮断する「鼻マスク」も販売量が3倍近く増えた。携帯しながら酸素を吸入できる「酸素缶」を求める人も多くなった。酸素缶の販売量は前年同期比4倍以上増えた。微小粒子状物質の排出および解毒などに良いとされるセリ・ブロッコリー・梨なども、少なくて49%、多くて107%まで販売が増えた。
衣類乾燥機・衣類ケア機など国内ではやや馴染みの薄かった家電の販売も急速に増えている。微小粒子状物質のために洗濯物を屋外に干さない家庭が増えた影響で、今年の国内衣類乾燥機市場規模は前年より3倍以上増え、30万~40万台に達すると見込まれる。衣類のほこりを払い、においなどを除去する衣類ケア機も稼ぎ頭商品になった。LG電子のトロムスタイラーは今年1月の1カ月間で1万台以上売れて月間ベースの新記録を樹立し、昨年の年間販売量も前年比60%以上増えた。
化粧品各社も「微小粒子状物質マーケティング」に乗り出した。マッドパック成分で洗顔時に微小粒子状物質を吸着させたり、肌をさらさらと滑らかにしてほこりが付きにくくする機能を前面に出した製品が多い。エイブルシーエンシーが「ミシャ」で打ち出した「ニアスキン ダストレス」ラインは、3月(1~27日)の売上高が前月同期比2.8倍に増えた。
微小粒子状物質の有害性が深刻化するにつれ、大気管理の環境企業に対する関心も高まっている。韓国環境部によると、2005年に1兆5,000億ウォン規模だった国内の大気市場は継続的に増加し、2020年には3兆7,000億ウォンに達すると予想される。特に国内の大気管理業者は中国市場進出を積極的に検討している。中国は新設される発電所に脱硫・脱硝設備の設置を義務化しているうえ、産業団地内でも微小粒子状物質の低減に向け設備要件を強化する傾向にある。






