アンドリュー・ラングというスコットランドの文学者が「人々が統計を利用するのは、まるで酔った人が街灯を利用するようなものだ」と述べた。酔った人は暗闇を照らすための街灯を、自分の体を支えるために利用する。同様に人々は統計を、事実を明らかにするという本来の目的ではなく、自分の立場を裏付ける目的で利用する傾向がある。
今年1~3月期と4~6月期の家計動向調査で、下位20%世帯の平均所得が前年比で約8%も減少したことが示され、大きな論争が起きた。これについて保守系メディアと野党は、最低賃金引き上げがむしろ低所得層をより貧しくさせた証拠だと解釈した一方、進歩的なメディアと政府は、家計動向調査の標本抽出方式が昨年と変わり、1人世帯や高齢世帯などが標本により多く含まれたために生じた結果だと説明した。一方、統計庁は世帯主の年齢や世帯員数の分布を昨年と同一と仮定しても結果が大きく変わらないため、標本の代表性および時系列的連続性に問題はないとの立場を表明したが、その後再び、昨年と今年の数値を直接比較する際には標本構成の変化に格別の注意が必要だと説明し、混乱した姿を見せもした。
来年度の政府予算案によると、雇用予算を含む保健・福祉・労働予算は約162兆ウォンで、全体予算の34.5%にもなる。このように莫大な予算がかかる福祉・労働分野の政策を適切に策定し評価するために、正確な家計統計が前提とされなければならないのはもちろんだ。したがって最近の家計動向調査をめぐる論争は、相当に重要なイシューだと言える。
そもそも家計動向調査が問題になり始めたのは、家計動向調査から得られた所得分配指標と家計金融福祉調査から得られた所得分配指標の間の乖離のためだった。家計動向調査の場合、細部の支出内訳と所得をすべて調査する資料の特性上、高所得層の回答率が低くなるなどの問題があり、所得分配を把握するのに適さないという批判があった。その結果、2017年から家計所得は家計金融福祉調査で把握し、家計動向調査は家計支出のみに集中する方向に定まったのだ。ところが一部の学界や研究所では、このように所得と支出の標本が二元化されることや、四半期ごとに行われる家計動向調査と違い、年次資料である家計金融福祉調査では所得の四半期別変動を見ることができない点などを挙げて反対する見方があった。また政府も、所得主導成長政策が低所得層に及ぼす効果をより迅速に把握するため、四半期別の家計所得資料を必要とするようになった。したがって廃止予定だった家計動向調査の所得部門を復活させるための努力が行われ、その結果、今年のような混乱が発生することになったのだ。
ラングが指摘したように、統計は生産することだけでなく、適切に使用することも重要だ。ならば統計の正しい使用のためにどのような原則が必要だろうか。何よりも各統計の目的と限界を明確に認識することが必要だ。まず家計動向調査の場合、標本の断絶により昨年と今年の数字を直接比較するのは適切ではないと考えられる。今年1~3月期、4~6月期の家計動向調査に現れた下位20%の所得増加率は、全国調査が行われた2003年以降で最も低い水準であり、逆に上位20%の所得増加率(約9.8%)は最も高い水準だが、所得分配が1年でそこまで悪化するというのは極めて異例だと言える。また今後の再設計で高所得層の回答率を高めたとしても、家計動向調査を所得分配の基礎資料として用いるのは適切ではないと考えられる。四半期別調査の特性上、所得の把握が正確に行われにくいためだ。したがって家計動向調査の所得部門は、特定集団に対する政策効果を把握するなど微視的な目的に活用し、経済全体の所得分配を把握する用途には使用しないのが妥当だろう。
紙を切るときはハサミを使い、瓶を開けるときは栓抜きを使えばよい。いわゆる「マクガイバーナイフ」は見た目は格好よくても、実際に使うには不便で非効率的だ。






