Anthropicが今月公開したClaude「Mythos」がソフトウェア業界を揺るがした。いわゆる「SaaSポカリプス」である。人工知能(AI)が既存のソフトウェア(SaaS)企業を置き換えるという恐怖だ。しかし投資の観点から見れば、悪い話ばかりではない。AIが既存企業を押し出すか否かにかかわらず、AnthropicはAI拡張のために「トークンファクトリー」と呼ばれる大規模推論用データセンターの利用を増やさざるを得ず、これは結局インフラ企業の恩恵につながる可能性が大きい。
実際にAnthropicはデータセンターを単に賃借するにとどまらず、自社構築に乗り出した。AIモデルの性能が高まるほどトークン消費が増えるためだ。これによりAmazon、Alphabet、NVIDIA、Microsoft、Broadcomなどが恩恵を受けると予想される。
Mythosは18の主要ベンチマークのうち17で1位を占めた。市場をより大きく揺るがしたのはサイバーセキュリティ領域である。Mythosは多様なOSやブラウザーで数千件のゼロデイ脆弱性を自ら発見した。Anthropicは危険性を考慮して一般公開を遅らせ、MicrosoftやNVIDIAなど約50社にのみ限定的に提供する「Glasswing」プログラムを運営している。
株式市場の反応も即座だった。関連報道の直後にTenableが約11%下落し、CrowdStrikeとPalo Altoも大幅に下げた。今月9日の公式発表後にはZscalerが8%超急落するなど、衝撃はセキュリティ株を越えてエンタープライズソフトウェア全般に拡散した。
核心は、勝者が誰であろうとAIインフラ投資は拡大するという点だ。Mythosが本格的に活用されるほど推論需要は急増する。脆弱性を自動探索するエージェント、長くなった対話、複雑な推論過程はいずれも膨大な量のトークン(コンピュート)を要求する。SaaSで減った価値が消えるのではなく、インフラへ移動する構造である。
Anthropicの戦略もこれを示している。同社は「Fluidstack」と約500億ドル規模の契約を結び、テキサスとニューヨークに自社データセンターを構築中だ。モデル開発を越えてトークン生産インフラまで確保しようとしている。
こうなると恩恵を受ける企業も明確になる。AmazonはAnthropicのAI売上から発生する総利益の相当部分を得る構造で深く結びついており、Googleはテンソル処理装置(TPU)ベースの推論でモデルGeminiとは別の新たな収益源を育てている。NVIDIAは大規模投資とGPU供給を担い、Microsoftはクラウドコンピュート契約を通じて地位を拡大している。BroadcomもTPU設計パートナーとして参加する。
結局、SaaSポカリプス論争の本質は価値が消えるのかではなく、どこへ移るのかである。Anthropicの事例だけ見ても数百億ドル規模の資金がインフラへ流れている。ここにOpenAI、Meta、Googleの投資まで加えれば規模は兆単位に拡大する。AIモデル戦争で誰が最後の勝者になろうと、データセンターインフラ拡張の需要が増加するため、関連企業の恩恵も続くとみられる。






