米国・イラン戦争の長期化により、西欧式の発展を夢見てきたサウジアラビアが最大の危機に直面した。米国に対抗するため紅海(バブエルマンデブ海峡)と東西パイプラインという二つの迂回路を人質に取った親イランのフーシ派反乱軍と、その背後のイランを同時に相手にしなければならない。しかしサウジが頼みとしてきたドナルド・トランプ米政権は、戦線拡大の負担からサウジの軍事支援要請に容易に応じられずにいる。中東を投資先へと転換しようとするムハンマド・ビン・サルマン・サウジ皇太子のプロジェクトが試験台に載ったとの分析が出ている。
15日(現地時間)、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、ビン・サルマンのサウジ政権がイランとフーシ派反乱軍、イラン・イスラム革命防衛隊(IRGC)が活動中のイラク発武装勢力から加えられ得る脅威の間で「三角包囲」されたと診断した。包囲の直接的原因は、トランプ政権がイランと起こした戦争だ。
しかしその端緒は11年前のビン・サルマンによるイエメン内戦参戦が提供した。2015年1月、父サルマン国王の即位と同時に国防相に就いた29歳のビン・サルマンは、2カ月後の同年3月、イエメン政府軍を支援してフーシ派反乱軍に対する大規模な攻勢に出た。2014年、国境を接するイエメンの首都が親イラン武装勢力であるフーシ派反乱軍に占領されたことを受けて下した措置だった。しかし戦況はビン・サルマンの意図通りには進まず、7年後の2022年に首相となったビン・サルマンはフーシ派と休戦を結び、イエメン内戦から手を引いた。
「イエメン参戦」は彼の足を引っ張る結果となった。アフメド・ナギ・カーネギー財団研究員は2022年の報告書で「(サウジの介入は)反サウジ感情を育て、フーシ派とイランの関係をさらに強化させた」と分析した。サウジに対するフーシ派の反感は、今年2月に勃発した米国・イラン戦争の局面でも引き続き起爆装置として作用した。
フーシ派もかつてのフーシ派ではない。フーシ派の兵力は最大35万人と推算され、弾道ミサイルや攻撃ドローンなど各種兵器を備えているとみられる。大部分はイランから支援を受けたものだ。フーシ派反乱軍はイランから部品を輸入して自ら生産した兵器も戦闘に活用している。特にイラン戦で確認された非対称戦略が、サウジとフーシ派の戦闘でも通用している。昨年基準でサウジは軍事費が832億ドルで世界8位であり、最先端の米国・欧州製兵器も備えた軍事大国だが、フーシ派のゲリラ戦に押されている。
サウジとフーシ派の武力衝突の中、イスラム最高聖地メッカにも初めて攻撃脅威の警報が発令された。サウジ民防衛庁は15日(現地時間)、メッカをはじめジッダ、ターイフ地域に攻撃の可能性を知らせる警報を発令した。イスラムの聖地メッカに攻撃脅威警報が鳴ったのは、中東戦争の勃発以来初めてだ。
中間選挙が差し迫るトランプ政権はサウジと距離を置いている。ビン・サルマン皇太子は自国を訪問したブラッド・クーパー米中央軍司令官を自ら迎え、心を尽くした。しかしトランプ大統領はビン・サルマン皇太子の2度の軍事支援要請を拒否したと伝えられた。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「サウジはトランプ政権の生ぬるい態度に挫折と失望を感じている」と指摘した。
サウジが米国の「安全保障の傘」の内側にとどまれるかも疑問だ。トランプ第2期の発足以降、サウジと米国は蜜月関係を見せた。昨年11月には米国と戦略防衛協定を締結し、今年7月にはサウジのウラン濃縮の可能性まで開いた原子力協定を米国と結んだ。トランプ政権が原子力協定承認の条件としてイスラエル主導の中東秩序である「アブラハム合意」への加入をサウジに要求し、進展が止まった状態だ。AP通信は、サウジを産油国を超えて「グローバル・ビジネス・ハブ」に転換するためのビン・サルマン皇太子の10年の努力が「悪夢のようなシナリオ」に直面したと分析した。
専門家はビン・サルマン皇太子の選択肢が狭いとみる。サウジがフーシ派反乱軍を紅海から追い出すために軍事的対応の水準を高めれば紛争が長引きかねず、フーシ派反乱軍の反撃がさらに激しくなる逆効果を生む可能性もある。ユーラシア・グループのフィラス・マクサド中東担当専務理事は「サウジはフーシ派反乱軍の要求に屈することはできないが、だからといって産油量の半分を失う全面戦争を担う余裕もない」と述べた。






